ただいま

 帰りました。
 先生も同期も、ちっとも変わってなかった。その変わってなさがうれしかった。「だって昨日も会ってたじゃん」って言われても腑に落ちる、という感じ。それぞれの役回りもまったく変わらない。不思議なくらい、学生のときのまま。大学の掲示板の前で待ち合わせたのだけれど、「久しぶりー」なんていうあいさつも何もなく、お互いに「呼び出しくらってんじゃないの?」みたいな冗談から入って、それがまたあまりにもしっくりくることにすこし驚いた。ゼミは私も入れて4人だけの小さいゼミで(おまけに私以外はみんな男性)、しかもゼミ自体も私たちが実質1期生みたいなもので、先生も意欲的だったし私たちも同じだった。4人しかいないからすごく仲が良かった。ゼミ以外でも、学校で自主ゼミでしょっちゅう集まって勉強していたし、だれかの家でごはんを食べたあとに文献を読む、ということも頻繁にしていた。友達からも、「ハルナのゼミは仲いいよねー」ってよく言われていたし、実際そうだった。小さい大学だけれど、やっぱりゼミにはそれぞれ特色があって、わりと放任の先生もいたしきっちり指導してくれる先生もいて、うちの先生は断然後者だった。もともとはヨーロッパ政治を勉強したくて入った大学なのに、結局日本政治を選んだのは先生の授業がいちばんおもしろかったからだ。卒論は1年以上かけて書いたし(その結果が作文だったのはおいといて)、「大学で勉強なんてあんまりしなかったって言う人も多いけど、うちのゼミはたぶん学部でいちばんくらい勉強したよね」って言い合うくらい勉強した。政治にどっぷり浸かっていた。ほんとうに楽しい、濃い2年間だった。
 卒業して10年以上過ぎて、今回欠席だったひとりは某大手企業に勤め、私は出版社に、あとのふたりは印刷業にと道は分かれた。紆余曲折あって、私は出版からも制作からも足を洗って、ゆるく仕事をしている。そろって会うのは7年ぶりくらいなのに、まったく変わらない。向かっている先は違うかもしれないけれど、それでも仲間だ、と思う。やっぱりどう考えても友達じゃなくて、同志とか仲間なのだ。あの2年間を共有している仲間がいてくれることは、ほんとうに嬉しいことだ。あの大学で、あの先生のもとで、この4人で一緒に勉強できてほんとうによかったとしみじみ思う。