2007年読了リスト181-186

 181。こういう、職場のマドンナ的な存在の人って、必ずいる。飛び抜けて美人というわけでもなく、それでもなんとなくマドンナ的な扱いをされる人。私はおよそそういう存在にはなれないので、おかしな言い方をするなら、違う人種の人だなあ、と思ってしまうのだけれど。

マドンナ

マドンナ


 182。縁談、というとなんだかかしこまった感じがする。3姉妹の長女である私も、妹に結婚は先を越されたので、この本でいうと露子の立場にあることになる。無口な父や饒舌な母を巻き込んで結婚に向かっていく様子が、なんだかおもしろい。自分の結婚のときはどんな感じだったのかなあ。まわりの人に聞いてみたい気もする。

桐畑家の縁談

桐畑家の縁談


 183。湘南を舞台にした連作。うーん、小綺麗にまとまってはいるんだけれど、それ以上に訴えかけてくるものがないというか、ぐいっと引っ張っていく力にやや欠けるというか。もちろん、その控えめさがこの本のよさだ、と言うこともできるけれど。私がよかったなあと思うのは、「こころ三分咲き」と表題作の「雨のち晴れ、ところにより虹」かな。

雨のち晴れ、ところにより虹

雨のち晴れ、ところにより虹


 184。これ、本当にフィクションなんでしょうか。ノンフィクションだ、と言われても、そうですか、と信じてしまいたくなるような本。三菱自動車リコール隠しをベースに書かれたもので、直木賞候補作だったそう。上下2段組みでボリュームも400ページ以上とかなり分厚いのだけれど、1日で読み切ってしまった。三菱自動車には、以前の愛車が三菱だったこともあっていろいろ思うこともあるけれど、本当にこんなことが内部で行われていたのならば、あのタイヤ脱落事故などを風化させてはいけない。「ホープにあらずんば人にあらず」なんて、おごり高ぶった選民意識も甚だしい。財閥の一角を成す大企業にたったひとりで立ち向かっていく赤松社長が、本当に格好よく見える。おもしろかった。オススメの1冊。

空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ


 185。読みやすいかと言われれば、私には決して読みやすい本ではなかった。けれど、こんな手法で本を書こうと思い立った著者のアイディアに、そして書き切ってしまったその力量にびっくりさせられてしまう。イヌと世界の歴史がつながっていくなんて、そんなことは考えたこともなかった。そしてなによりも文章がとても力強い。繰り返しになるけれど、私にとって決して読みやすい文章ではなかったけれど、それでも読みやめることができないくらい。言葉の力の強さを存分に味わった感じ。

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?


 186。実際の私を知っている人ならばうなずくだろうけれど、私は緊張すると、吃音とまではいかなくても多少どもりが出る。それをそれほど気に病んだことはないし、ましてや話し方教室に行こうと考えたこともない。吃音が出てしまう、どうやって会話したらいいのかわからない、ちょっと問題を抱えた4人が、前座よりは上、でもまだ真打ちにはなれない二ツ目という段階の噺家のもとに集まって、という話。『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子は、その『一瞬の風になれ』がはじめて読んだ本で、これはタイトルは知っていたものの、今まで手が伸びなかった本。けれどこれが、予想以上によかった。大きな事件が起こるわけでもなく、大どんでんがえしがあるわけでもないし、それぞれに抱えている問題が全部解決するわけでもないけれど、それがとてもいいのだ。三つ葉さんの落語を聞きに行きたくなる。映画はどんな感じだったのかなあ。

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)