読了本

 なかなか題材にしにくい統合失調症がひとつのテーマになっているので興味を持って読んだけれど、もうちょっと掘り下げてほしかったと思う。現実の世界に存在するのに、そこにあるものを見ていない人たち。感情の揺れはとてもよかったと思うけれど、やはり最後がどうも腑に落ちない。ちょっと消化不良。

風の音が聞こえませんか

風の音が聞こえませんか

 うーん、『長い終わりが始まる』の方が個人的には好み。私の男友達には、こんなめんどくさい人たちはいなかったなあと思う。もっとすっきりはっきりさっぱりしているのは、お互いに恋愛感情がちっとも混ざらなかったせいなのかもしれないけれど。恋人になりそうだったのになり損ねる、というのはかくも複雑な感情に発酵してしまうのだろうか。
カツラ美容室別室

カツラ美容室別室

 『告白』ほどの衝撃はないけれど、おもしろかった。ただ、良くも悪くも第1作目の衝撃が強すぎて、どうしても弱い印象になってしまうのは否めない。それと、やっぱり都合がよすぎだし作り込みすぎ。伏線もなんとなく先が読めてしまうし、もうちょっとひねってほしかったというのが正直なところ。読ませる力はあるから、次の作品も読みたい。それにしても、この読後感の後味の悪さは天下一品だと思う(もちろん褒め言葉)。
少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)

少女 (ハヤカワ・ミステリワールド)

 絲山さんはその男らしさが何よりの魅力だけれど、相変わらずの男前っぷり。私自身がもうとてつもなくアウトドアに向いていない人間なので、キャンプをやりたいと思ったことすらないけれど、なんだかおもしろそうだなあと思わされてしまうほど。どんなことをすれば自分が機嫌良くいられるかを知っている人だと思う。車とキャンプと酒。「けれども、同じところにいつまでとどまっていても仕方がないのだ。/あなたは、日常に帰って行く。/ちょうど、一冊の本を読み終えて閉じるように。」
絲的サバイバル

絲的サバイバル

 文語体の混じる、一種独特な文章の根底に流れているのは、猫に対する深い愛情だ。口では何やかやと言いながらも、実際はとても猫をかわいがっているのだろうし、大事に育てているのだろうという暮らしが垣間見える。命を預かっている、という言葉が真剣さを表現しているし、著者と暮らせている猫は幸せだろうなと思う。いつか自分が猫を飼うことがあったら、この本はいいお手本になるだろう。
猫にかまけて

猫にかまけて

猫のあしあと

猫のあしあと

 N響で第1ヴァイオリニストを長年努めてきた著者。ユーモアたっぷり、オチもしっかり、楽器を演奏する人ならばどこかに共感できる点が必ずあると思う。N響は「カイシャ」であり、「おり番」を楽しみにする、普通の会社員と同じような考え方がとてもおもしろい。同郷ということを差し引いても、音楽好きの人にはお勧めしたい1冊。プロオケの人たちも普通の人間なのね、としみじみ思う。
バイオリニストは肩が凝る 鶴我裕子のN響日記

バイオリニストは肩が凝る 鶴我裕子のN響日記

 これで200冊読了。まあまあのペースだな。