読了本

 アザミよりもチユキに心を奪われる。私の高校時代とはあまりにも違いすぎて、学校生活で共感できる部分はちっともなかったけれど、"no music, no life."な感じはわかる。津村作品ははじめてで、大阪弁にも慣れず、文章の書き方にも慣れるのに時間がかかった。作品全体としてはあまり馴染まなかったのだけれど、さまざまなディテールの細かさに助けられて読みきったという感触。「自分は音楽を聴いたという記憶だけで生きていけるのではないかと思った」。

ミュージック・ブレス・ユー!!

ミュージック・ブレス・ユー!!

 自伝的小説なのかエッセイなのか判断がつきかねるけれど、読んでいて心地よかった。さまざまな場面と、さまざまなお菓子。長野まゆみさんの作品を読むのははじめてだったので、好きな人がこれを読んだら著者の人となりがうかがえるようでもっと楽しめたんだろうなと思う。美大に行き、デパートの店員になり、そこから作家になるという道のたどり方が独特で驚いた。お菓子の包み紙を大事にしまっておいたりしたのを、懐かしく思い出した。どことなくノスタルジックさが漂う1冊。
お菓子手帖

お菓子手帖

 朝ごはんを食べないで学校/会社に行く人が信じられない、とつねづね思っているので、堀井さんの「朝ごはんを楽しみに寝て、朝ごはんを楽しみに起きる」という言葉がすごくよくわかる。お味噌汁にごはんに納豆、でも、ミルクティにトーストにはちみつ、でも、それぞれの楽しみがある朝ごはん。夜に一緒にごはんを食べるのより、朝ごはんを共にするほうが、人とも仲良くなれそうな気がするのは私だけかな。
朝ごはんの空気を見つけにいく

朝ごはんの空気を見つけにいく

 ほむほむはやっぱりすばらしい。こんなにだめっぷりをさらけ出しても嫌らしくならないのは、ほむほむならではだと思う。『世界音痴』の頃のままで、なんだかうれしくなってしまうほど。図書室の本をなくして「学校が燃えればいいのに」と思ったり、1個の石を蹴りながら家に帰れるか挑戦したり、きっとどこかしら、わかるわかる、と思うところがあるだろう。古本屋でサインを出し合っているご夫婦、いちど見てみたい。
整形前夜

整形前夜

 4篇を収めた短編集。表題作と「迷走」がよかった。恥ずかしながら、傍聞きという言葉は今回はじめて知った。「迷い箱」はどうも文章に入り込んで状況を把握するまでに時間がかかり、「899」については終わり方に納得がいかない。えー、あんなことやってるんだよ? と思ってしまう。派手なトリックもなく、全体的に地味ではあるけれど、もうすこし読んでみたい。
傍聞き

傍聞き