2007年読了リスト172-180

 そろそろ読書の秋、といってもいいかしら。


 172。久しぶりの絲山さん。途中まで連作ということがわからなかった。今までの絲山さんの作品の中では、『海の仙人』がかなり印象に残っているのだけれど、この『ダーティ・ワーク』もとてもよかった。絲山さん、うまい人だなあと思う。

ダーティ・ワーク

ダーティ・ワーク


 173。池澤夏樹は今まで何冊か読んだことはあるけれど、それほど読み返したい作家ではなかったのだ、実のところ。けれど、この本はとてもよかった。私は、こういう自分のことさえも客観的な目で見ているような、俯瞰的な文章を書く人が好きなのだと思う。この本を読めたことはとても嬉しい。この続編があるのならばぜひ読みたい。

異国の客

異国の客


 174。ごはんを炊く、という行為が好き。私は断然パンよりもごはん派なので、1日1回は必ずごはんを食べたい、と思うし、朝からもりもりごはんを食べられる。炊き込みごはんも大好き。ル・クルーゼでごはんを炊いたときは、自分が思っていたよりもおいしく炊けるのにとてもびっくりしたっけなあ。

鍋でごはんを炊こう

鍋でごはんを炊こう


 175。内ゲバ誤爆、と言われても、学生運動にまったく縁がない世代の私には、ぜんぜんピンと来ない。それでも、学生運動のあおりで姉と恋人を殺されてしまった主人公の気持ちは、察するにあまりある。あの消極的な自殺を試みてしまったのも、そのせいなのだろう。それでも、姉が好きだった人は、きちんと自分の意志を貫き通した、ということが、すこし救いになったのだと思う。

タペストリーホワイト

タペストリーホワイト


 176。東海村の臨界事故が起こったとき、私はまだ出版社に勤めていた。会社に、東海村からそう遠くないところに住んでいる先輩がいて、先輩が「妹から電話が来て、東海村で事故が起こって避難勧告かなんかが出てるらしいから今日は会社に泊まる」と言っていたことをよく覚えている。自力でエネルギーを確保できない日本が原子力に頼るのはしかたのないことなのかもしれないけれど、それでもこんな事故はもう2度と起こってはいけない、と思う。あんなに無惨な形で亡くなる人がいてはいけない。

被曝治療83日間の記録―東海村臨界事故

被曝治療83日間の記録―東海村臨界事故


 177。柳原和子さん、という人を、私は無知でまったく知らなかったのだけれど、とても正直な文章を書く人だと思う。奥山貴宏さんの本を読んだときにも何回も思ったことだけれど、自分がガンだと診断されたら、こんなに冷静に自分の気持ちを描写できるものだろうか。それができるからこそ、作家たれるのかもしれないけれど。自分にいちばんいい治療法を求めて、いろんな先生を訪ねて歩く、生きる執念を感じる。

百万回の永訣―がん再発日記

百万回の永訣―がん再発日記


 178。重松清の書くものはやさしい、とどこかで読んだ記憶がある。そして、たしかにこの本はとてもやさしかった。死を目の前にした人たちなのに、どうしてこんなに落ち着いていられるのだろう、とは『百万回の永訣』でも思ったこと。重松清という人が書いたものを、もっと読みたくなった。

その日のまえに

その日のまえに


 179。この本はかなり前から読みたかった1冊。キョウコ・モリという、明らかに日本人の名前なのにどうして英語で書かれたものなのか不思議だったけれど、どうやらこの本は半自叙伝的な小説らしい。12歳で最愛の母を自殺という形で失ってしまった主人公の有紀。自分を愛してくれない父親と継母から離れ、すこしずつ自らを立ち直らせていく有紀は強いと思った。著者は、この本が日本で発売されると決まったとき、自分で日本語訳をすることを拒んだのだという。

シズコズ・ドーター

シズコズ・ドーター


 180。万年筆の描写から始まるこの本、映画化されるそうで。万年筆は私も好きで、きちんとしたものは持っていないけれど、おもちゃっぽい万年筆を中学生の頃に使っていたことがある。大人っぽい感じがして、それがとても気に入っていたんだっけ。伊吹先生がとても魅力的に書かれていて、こんな先生に教わる生徒たちは幸せだなあと思う。ずっと隆一の心に残っているのも、わかる気がする。

クローズド・ノート

クローズド・ノート