2008年読了リスト123

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

 読みすすめたいような、これ以上読みたくないような、複雑な気持ちのまま読み終えた。私は以前から死刑制度に興味があって(というと語弊があるのは承知の上で)、学生時代卒論のテーマの候補に挙げていた。自分の意見はどうなんだ、と聞かれてどっちとも言えなかった私に、研究室の先生が「その状態で書くのはやめたほうがいい」と助言してくださったのだった。今考えると、それで正解だったと思う。今でもまだ死刑存置派か廃止派かと言われても答えは出せない。凶悪犯罪が増えている今日、死刑制度が犯罪抑止力になっているのかと思いきや、この本の中のデータによるとそうでもないらしい。それならば何のために死刑があるのか。人には人を殺しちゃだめ、と言っているのに、国は人を殺してもいいのか。ますますわからない。
 とかく人の物の見方というのは一方的になりがちで、読みながら私も自分の視点の偏りに何度も気づかされることになった。ただ、日本ではあまりにも死刑についての情報が少なすぎる。知りたいと思っても、知ることすらできない。その状態で、死刑を廃止するか否かという議論をしても、実感がまったく伴わない。何も知らないまま、殺人を犯した人は死刑にしろ、という意見は極端に過ぎる。まず、知らなければ。この国が、死刑という制度の下で何をしているのかを、しっかりと。