読了本

 終結に向けてどんどん突き進んでいくのが、早く終わってほしいような終わらないでほしいような小説。たった数ヶ月のあいだに、東大の大学院生が肉体労働を経験し、覚醒剤を打つようになる。光と陰の部分を実体験として感じた国男。国家の威信をかけたオリンピックという名目の下ではなんでも後回しにされ、労働者は使い捨てられ、純粋な国男はそれが許せなかったのだろう。北京オリンピックでも実際にこういうことがあったのではないかと思ってしまうほど。上下2段組、500ページ超の大作だけれど、長さを感じずに読みきった。

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

 ル・クルーゼをつかったレシピ集などでおなじみの平野由希子さんのエッセイ。お菓子から料理の道に入った人とは知らなかった。料理研究家というだけあって、ほんとうにいちにちじゅう料理をしたりレシピを考えたりしているのだなあ、よっぽど料理が好きじゃないとやれない仕事だなと思う。レシピの作り方は、いつも自分が見るレシピというのはこうやってできるのかという過程がわかっておもしろく、また、文字では表せない思いがたくさんつまっているのだなと感じた。ラタトゥイユとポテトサラダを食べたくなった。
料理研究家のつくりかた

料理研究家のつくりかた

 うーん、うまい。あんまり積極的には認めたくないけれど、私と似ているところがたくさんあって、嫌だなあと思ってしまうのは同属嫌悪から来ている気持ちだと気づく。東大でもないしTOEIC850点もないけれど、周りの主婦や自分の両親、姑に対する厳しい目線なんかはすごく理解できる。周りからの期待に応えるんじゃなくて、自分で何かをしていかなければこういう閉塞感みたいなものは打破できないよね。がんばれ、と応援したくなる主人公だった。この作家さん、注目だ。
憂鬱なハスビーン

憂鬱なハスビーン

 豪華絢爛、耽美とも言えるような森見ワールドの宵山祭り。京都は何回も訪れているのに、宵山はいまだ見たことがなく、1回でも見たことがあればもっと楽しめたのだろうな、と思う。同じ宵山祭りでも、いる場所、視点が違えばまったく違うお祭りになる。くるり、ひらりと軽やかに移ろう登場人物たち。奥深い京都ならば、これが実際にあってもおかしくない。装丁も内容と合っていてすばらしい。森見的宵山を堪能した。
宵山万華鏡

宵山万華鏡

 江國さんを読むきっかけになった最初の本。一緒に暮らしていた健吾に「引っ越そうと思う」と別れを告げられる梨果、そしてその原因である華子。すこしずつ歪んでいく関係と、でもそれで正しいと思えてしまうある種の狂気。華子みたいな女性にはかなわないな、と思う。梨果が健吾との別れに納得するまでの15ヶ月間は、苦しかっただろうけれど、あとで思い返せば華子との思い出がたくさんつまった大切な期間になったのだろうな。愛しきれない、憎みきれない。
落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

 それと、最近買った雑誌とマンガと本。
ecocolo (エココロ) 2009年 10月号 [雑誌]

ecocolo (エココロ) 2009年 10月号 [雑誌]

 飯島奈美さんのごはんは本当においしそう。「かもめ食堂」も「めがね」も、観たあとごはんを食べたくなったっけ。「プール」も観たいし、堺雅人さんも大好きなので、「南極料理人」ももちろん観に行く予定。
3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 3 (ヤングアニマルコミックス)

きのう何食べた?(2) (モーニング KC)

きのう何食べた?(2) (モーニング KC)

 そういえば、どっちも食事のシーンが多いマンガだなあ。