読了

 ごく最低限の言葉しかつかわない文章は、こんなにも想像をかき立てられるものなのだろうか。誰が、どこで、ということはあまり語られないのだけれど、それこそがかえって石田千の文章を特徴づけている。食べ物に関する描写が上手い人だと思っていたけれど、やはり。名の通ったお店で贅沢なメニューを食べたという、いわゆるグルメエッセイとは一線を画すけれど、日常の食が淡々と綴られていて好感が持てる。ひとりで飲みに行って、さっと引っかけて帰ってくる、なんてやってみたいなあ(下戸なので実現不可能ではあるが)。

きんぴらふねふね

きんぴらふねふね

 音がまったく聞こえないというハンデがありながらも、銀座のホステスとして働く著者は、たしかに前向きですごいと思う。ただ、その一方でどうしても気になってしまうのが、本の中であからさまに悪く書かれてしまっているA先生、お店のママ、そしてご両親のこと。もうちょっとなんとかやわらかく文章にする術はなかったのかなあと、老婆心ながら思ってしまう。気遣いができる、ホステスとして働けるのは、やはり一種の才能なのかもしれない。蛇足だけれど、そんなに字がきれいだとは思わなかったなあ…。
筆談ホステス

筆談ホステス

 ここ最近、読書のペースが落ちていてあんまり本を読めていない。