読了

 再読。誰よりも日本語と日本文学に焦がれる妹と、アメリカ人になろうとしてなりきれない姉との、電話線をはさんで交わされる、日本語と英語の入り混じった会話と感情の交錯。自分の希望とは違うところで、バイリンガルとなってしまった人の、アイデンティティの苦悩と言ってしまえば軽くなってしまうが、当事者にとっては重く苦しいものでしかないのだろう。時間的にはたった1日の出来事でしかないのだが、幾重にも入り混じる回想と感情が、それと感じさせない。どこを切り取っても日本的な雰囲気が漂う、不思議な魅力のある1冊。

私小説―from left to right

私小説―from left to right

 地に足のついた人だな、と高山さんの文章を読むたびに思う。天気や季節のうつりかわりに敏感になり、鳥の声を聴き、土の匂いをかぐ。当たり前のことを当たり前にやっているだけなのに、それがとても愛おしく思える。私もアンテナをきちんと張り巡らせて、いろんなことに敏感でありたいと思う。自分のもやもやしている感情を、過不足ない言葉で表してくれている文章がいつもどこかにあるのだけれど、今回もそれは健在。あと1巻で終わってしまうのがとても残念。
日々ごはん〈11〉

日々ごはん〈11〉

 小さいときにマンガを通ってきていればわかるのだろうが、私は大人になってからしかマンガを読んでいないので、知らない作品がたくさん。知らないマンガ家の名前も多くて、頭の中ではてなマークが飛び交いながら読むという状況だった。「やおい」も「BL」も「百合」もほとんど読んでいないので、いまいち実感としてとらえられず、若干消化不良。それでもセリフの言葉の組み立て方やマンガに対する愛情はびしびし伝わってきて、いろんなマンガを読んだあとにもういちど読んでみたいと思った。
よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

よしながふみ対談集 あのひととここだけのおしゃべり

 一方通行の恋愛で、最後にはふられてしまう短編の連作集。ふった人も、ふられる。ふられた人が、ふる側になる。「自分は自分」と思っていたって、恋愛にのめりこんでいるときには相手の価値観イコール自分の価値観、みたいに思い込むことだってあるし、それが過去のことになればそれを全否定したくなることだってある。でも、恋愛って応用が利かない。前の人がこうだったから次の人はこうしよう、なんていうことも通用しない。それでも、何回でも人は恋愛をしちゃうんだよなあ。
くまちゃん

くまちゃん