読了

 必要以上に感情をむき出しにしない登場人物たちの悲しみこそが、著者の悲しみと同じもの。あまりに悲しいと涙も出ない、ということはよく言われることだけれど、たぶんこの本に出てくる人たちもきっとそんな思いでいるのだろう。根底に流れる悲しみと、どう折り合いをつけていくのかは、それぞれ違う。立ち向かっていく人、受け入れる人、妥協する人。けれど、決してその悲しみが消えたわけではない。アイデンティティについて、深く考えさせられる。

アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)

アメリカにいる、きみ (Modern&Classic)

 『容疑者Xの献身』から読み始めてしまったので、どうも短編集が物足りない、と感じてしまうのは否めない。さらさらと読みすすめられる文章のせいもあるかもしれない。ただ、それでも「おもしろかった」と思わせてしまうのはさすがの技量。ドラマを見てから、湯川先生が福山にしか思えない…。
予知夢 (文春文庫)

予知夢 (文春文庫)

 タイトルはアレでちょっとぎょっとしてしまうけれど、内容はいたってほのぼのゆるゆるな感じ。衝撃的な過去を持った富貴子さんや強烈すぎる内山さん、父母に振り回されながらも自分の居場所をみつけようとするあおば。下を向いて歩くことが多いことを指摘されても、あおばはどこかしっかりしているように見える。たぶん、それは「人がやっているから」という理由ではなく、自分で自分の道を歩き始めているから。おおお、と思う表現もあり、私は好みだった。
今日もやっぱり処女でした

今日もやっぱり処女でした