2009_010「空気人形」
ペ・ドゥナ主演の「空気人形」*1を観てきた。ラブドール、ありていに言えばダッチワイフが、持たないはずの心を持ち、世界と触れ合っていく話。設定は奇抜だしありえないはずなのに、どこか甘さも切なさもあって、ふわふわしているような、でも人間関係のいちばん根底に流れるものを見据えるような、輪郭がおぼろげな、でも重いものを持ち帰るような、不思議な雰囲気の映画だった*2。全体的にどのシーンも色素が薄く、川内倫子さんの写真のような色合いだった。
主演のペ・ドゥナが文句なしにいい。訥々と話す日本語も、もともとが人形という設定だけあって気にならないし、本当に人形みたい。人間の優しさとか汚さ、傲慢さ、愚かさ、孤独、空虚なんかをひとりで受け止めて、なんとか周りの人と関わっていこうとするのぞみがすごく哀しかった。結局、人間はみんなからっぽ。主役以外にも、ARATAや板尾創路や余貴美子、岩松了、オダギリジョーなど、脇役も秀逸。物語の舞台として、高層マンションのそびえる向こう側ではなく、都会より人間関係が密接であろう東京下町が描かれているのも、ひとつ気になった点だった。内容が内容だけに、誰にでもお勧めできる映画ではないけれど、私は、この映画好きです。